尾川丁仏参道入り口の道標と石仏群

千葉山智満寺へと登る人々を見守ってきた石仏と道標

尾川丁仏参道入り口の道標と石仏群

尾川丁仏参道入り口の道標と石仏群

尾川丁仏参道入り口の道標と石仏群、全体

道標前から丁仏参道方向を見る

尾川丁仏参道入り口の道標と石仏群、石仏群

丁仏参道入り口の石仏群

紀州川中嶋八兵衛、尾川丁仏参道入り口

尾川丁仏参道

尾川丁仏参道入り口の道標と石仏群、地蔵立像と台石

地蔵立像と元台石の石碑

尾川丁仏参道入り口の道標と石仏群、道標の銘

道標の4面

石碑・石仏群の内容
  • 敷地内右から地蔵立像、石碑(元地蔵台座?)、馬頭観音a、川中島八兵衛碑、馬頭観音b。石仏群から少し離れた道路交差点脇に道標1基。
  • 地蔵立像、馬頭観音aには銘は見えなかった。
  • 石碑は背の低い墓石を思わせる立方体の石材でできていて、正面に「みきちはさんみち(右千葉山道)」左側面に「天保十四年卯仲春吉日、敬造之」と刻まれている。裏面はよく見えなかったのだが「[2字不読、両親?]為菩提/再造発願主/落合村/[長谷?][4字不読]」などと刻まれているようだ。後述するように元は地蔵の台石だった。
  • 川中島八兵衛碑については「尾川の紀州川中嶋八兵衛」を参照のこと。
  • 馬頭観音bは光背に「昭和二年六月廿九日、大森号」と銘が刻まれている。大森号は馬の名前だろうか。馬の供養のために建立されたものと推測される。
  • 道標は石仏群からは少し離れた千葉山智満寺へと登っていく市道の脇に建っており、根本付近に文字が地中に隠れてしまっている部分がある。市道から見て正面に「南 島田町往[還?]」、左側面に「左 千葉山新道」、右側面に「右 千葉山旧道」、裏面には建立者などの情報があったようだが「[尾川?]支部」しか読み取れない。
解説

島田市尾川から同市千葉の山中に建つ千葉山智満寺へと登る尾川丁仏参道の入り口に、これらの石仏・石碑が置かれています。

00shizuoka静岡観光おでかけガイド[1]によると、地蔵立像と馬頭観音aは元は覆屋の中に納められていました。地蔵と馬頭観音aが置かれているコンクリートの土台の四隅に小さな四角い穴があったのですが、これは覆屋の柱の跡だったようです。また、現在は地蔵の脇にそえられている石碑は、元は地蔵の台石でした。となると、元台石の石碑に刻まれた天保14年(1843年)という年号は、地蔵が建立された年でもあるのかもしれません。

台石に千葉山への道が示されていることからすると、この地蔵は千葉山智満寺参道の道しるべとして建立されたものだったようです。ここから智満寺へ登る道には1丁(約109m)ごとに石仏が置かれているため「丁仏参道」と呼ばれているのですが、これら丁仏は慶応2年(1845年)に島田宿や近在の信者らによって寄進されたのだそうで[2]、これは参道入り口の地蔵が建立された2年後のことです。このころに智満寺参道を整備したくなるようなきっかけが何かあったのかなということが気になっているのですが、今のところ不明です。なんであれ、このような寄進物の多さは当時の智満寺の人気の高さを物語るものではあるでしょう。

道標も地蔵と同じく智満寺参道の案内として設置されたものです。建立時期は不明ですが、「支部」などという単語が用いられていることからすると、どんなに古くとも明治時代より前にさかのぼることはないだろうと私は考えました。他所では青年会が道標や灯篭などを建てている例をよく見るので、もしかしたら大津村青年会尾川支部だったのかな?と想像するのですが、どうだったんでしょうか。

この道標には、「島田町往」という旧島田町(現在でいえばJR島田駅方面)へ向かう道と、千葉山へ向かう新旧の道があるということが示されています。「島田町往」はこれ以下の部分が隠れて見えないのですが、おそらく全文は「島田町往還」になるものと推測され、かつて島田伊久美往還[3]と呼ばれた現在の県道217号のことを指しているのではないでしょうか。また、千葉山旧道は尾川丁仏参道を指し、新道は道標が面している市道尾川千葉線を指しているようです。現在では石碑にいう旧道はハイキングコースとして人気があり、新道である市道尾川千葉線は智満寺まで自動車で行きたい場合によく使われるようです[4]

脚注

  1. 00shizuoka静岡観光おでかけガイド : 江戸時代の民間信仰 謎の巡礼者「紀州 川中嶋八兵衛の墓」 (静岡県島田市尾川「尾川丁仏参道」入口付近)
  2. 00shizuoka静岡観光おでかけガイド : 33体の石仏がある人気ハイキングコース 尾川丁仏参道(おがわちょうぶつさんどう) (静岡県島田市尾川・千葉 智満寺旧参道)
  3. 静岡県志太郡役所編『静岡県志太郡誌』1916年、p.1193(国立国会図書館デジタルコレクション
  4. 千葉山へ登るハイキングコースについては「島田市観光協会 > 観光パンフレット」に掲載されているPDF「島田市観光マップ/ハイキングコース版」を参照するとよいと思います。なお、自動車で智満寺へ行きたい場合、石仏前の広く新しい道路を東へ抜けて大草から県道217号を北上する道もあるが、私個人の感想としては県道のほうが市道より狭くて大変な気がするのであまりオススメできません。